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いきなりファンタジー
まだ暗い部屋の中の 少し硬いベットの中で目覚めた時 

彼女は彼女の半身が死んでいるのに気がついた。


彼女の体の背面 辛うじて3分の一程の厚みを占めたソレは ほんのり冷たくなっていた


文字どうり 彼女の半身 いや 三分の一身が




タミルの村に駆け足でやってきた寒さが 

この小さな村を2・3日で秋の景色に変えようとするかの様に 

珍しく霜をおろした 

まだ夜の明け切らぬ早朝に ひっそりと息絶えたのだ




彼女は起き上がると 

素早くベットから抜け出し すらりと伸びた白い足で ベットの側に揃えてあった靴を履きながら 

短い廊下に出て 端にある梯子を降り始めた。


色褪せた絨毯が敷かれ 色とりどりのクッションが床にいくつも並べられた

居心地の良さそうな居間に彼女が降りると同時に 


半屋外の かまどや調理台が作られてある場所に通じている木のドアが開き


家に入ろうとした中年の女性が彼女を見つけた。 


瞬間、凍ったように顔を歪める




『バーミンダ どこに行くの???』


バーミンダと呼ばれた彼女は まるで目を閉じたら 

その声まで聞こえなくなるかのように硬く目を閉じた


そのまま その女性とは反対側にある 木のドアに向かって走り出していた

大きな木製の衣装箱や背の低い戸棚に足をぶつけながら 

正面玄関らしいドアに行き 大きく開いて 振り向きもせずに家を飛び出した。



娘の着ていた 袖の短い着物のような寝巻きの その袖を掴みきれず

と言っても 気がつくと もうドアから出て行く所だったのだけど


茫然と立ち尽くしていた母親は 


それでも一瞬後には 娘の出て行ったドアに駆け寄り 

風のように走り去った彼女の残像に向かって叫んだ


『バーミンダ 戻っておいでぇーーーーー』


それから 何も知らず まだ寝ているだろう 夫の元に走った




彼女は走りながら 母親の叫ぶ声を聞いていた。

彼女の家から 100mは離れているだろう そこに

ホンのわずかな時間でどうやって辿り着いたのか


走れば走るほど 彼女は自分の体が軽くなっていくように感じた

だがどんなに早く走ろうと 背中に張り付いた半身からは逃げ出すことができない。



私は バーミンダじゃない。

貴方達が バーミンダと名づけた子は 私じゃない。

私が その子を殺してしまった!!!!!!!!




走りながら彼女は

大きな通用門と
 

村の背後にそびえる山の崖の部分以外は


丸木の柱でぐるりと囲まれた この村を抜け出すために どこに行くべきか 


鮮明なビジョンがあった。



前から計画していたわけではない

ただ漠然と もう家には居られない事だけは分っていた 

だが この危険な大地のどこに 彼女の行くべき場所があるのだろう?



先の事は なにも分らない
 
知りたくはない


けれどもう行くしかない。


彼女は村の北側にある切り立つような崖に行くと

一番防壁よりに立つ 一際大きな木に登った


木と防壁の間には約20メートルの距離がある



彼女は大きく伸びた枝の上を慎重に歩いて防壁に近づいた

本当に体が軽くなっているのか 枝が随分細くなっている所まで進めた

それでも壁までは5メートル以上離れているし 

防壁の頂上は彼女の居る枝よりさらに高い


すこし戸惑ったが 枝の上で軽く上下に振動をつけると 

丸木の壁に向かって飛んだ


何もないかの様に見えたが そこには 枝を切り落とした跡がいくつかあり

その一つをつかみ壁にしがみ付くと



ロッククライミングの要領で防壁を登りきった 



そして 


家を出て 初めて深く息をついた 
 

防壁の向こうに広がる荒地を眺めると

 

所々に大きな岩や 小さな林が転々と広がっている


彼女は まだ薄暗い空を 茫然と見つめた。




ふと 気が付くと 空の一部が明るくなっている 


はるか遠くに広がる黒い森の稜線から



日が昇り始めたのだ


一筋の光が走り


それを受けて 荒地に降り積もった霜がキラキラと輝いた。




もし こんなに澄んだ朝でなければ 彼女は家に引き返していたかも知れない


それほど 行く当ては無かった。



ただ 自分は 両親が育てたかった血を分けた子供では無く

その子の体を蝕んで育ってきた者なのだ 


それでも 父も母も その子供ではなく 『私』 を愛してくれていた


だがはたして 真実を知ったなら 自分を受け入れてくれるだろうか?


この体が 人間以外の物になっても?




彼女は 防壁から飛び降りた。

25メートルはあるだろうか 普通の人間なら大怪我をしている高さだ


片膝をついた姿勢で難なく着地していた彼女は 静かに立ち上がると

自分が寝巻きのままだった事に初めて気がついた


『着替え・・持ってくれば良かった』


清らかな朝日に元気を貰う自分は 闇の存在ではないだろうと感じても


存在して良い者かどうか はっきりとした自信は無い。



”先ずは 自分の事を調べてみよう”



家を飛び出してから 初めて旅の目的が決まった。

決まると自然と足が前に出た



あの森を越えたら ガバスという街道沿いの町に出る それから 都まで向かいながら

色んな街で聞いてみよう

きっと自分が何なのか分るかもしれない


彼女は 朝日が昇りきった その下に広がる黒い森に向かって歩き出した。





【 2008/11/05 13:07 】

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